封印されし悪魔のツめ
あれを、あの箱に閉じ込めて何年に立つだろうか
分陰はまだ解けないにしても
時々胸に差すような痛みを感じる
どちらにしても、物理的に
私が老いたとも考えられるが
それよりも、私の子供が、夏休み帰りに持ってきた
自由研究で使うような標本箱に、閉じ込めたのがいけなかったに違いない
子供に無理言って、学校で作って来たと言うそれに入れたのだ
もう、時間は残されていないのかも知れない
そう言えば、もうすぐ十二月
冬休みだ
子供が孫を連れて帰ってくるのだ
私は、後を継がすことを考えながら
黒い箱を、眺めていた
恨みとは恐ろしいものだ
私が、三か月かけて、廃材を集め、なけなしのお小遣いで
親がかってもくれないもので、作ったのだ
それを、あの人間は、いともたやすく取り上げた
そう、私は決めたのだ
家に帰ったら、あの箱を壊してやる
あの人間が、後生大事にしまっているものを
私よりも、気にかけているような
あれをこの手で壊してやる
私は、車を運転しながら最近見ていない
雪道を、まだ見ぬ家を見ながら思い描いた