霧の木曜日

コケシの1人ゴトhttp://rinnnedou.cart.fc2.com/鉱物と変態的日常のゴミ箱と化す予定 https://gagagaruisu.thebase.in

彼女に訳を話すと

すぐにあいにこいと言う

車で三十分ほど

高速を乗り継ぎ

田舎風景の中に

彼女の屋敷はあった

竹林と林が交差し

そこに半ば埋もれるように

瓦屋根の家が建っていた

窓は全てカーテンが引かれ

所々破れ

猫らしき物がこちらを警戒そうにみてはどこかへ行った

チャイムを鳴らすと

エプロン姿の女性が姿を現したが

ぞっとするほどに、あのころと変わらない

もしかするとあのときでさえ、高校生

いやそれ以下だったのか

たしか、もうかれこれ十年

僕が、警察を辞める数年前からもあっていないからな

「どうも」

電話でも良いじゃないかとも思ったが

しかし、依頼を受けるかもしれないし

そうだから呼んだと言った方が可能性は高いだろう

一見として廃屋に近いが

その古びた白いそのままの木の玄関の横には、

古びた看板が立っている

「霊能力撃退事務所」

あとは、文字が、黒く塗られ

なんとか笹木の文字が読めるが

代替わりで、名前を変えるのがめんどくさくなったのだろうか

 

きしむ床

いちお客室なのだろうか

畳に古い西洋のソファー

日の当たる部屋のもっとも外側の細い廊下は赤焼け

猫のしっぽが見えた

テーブルに、品の良さそうなティーカップ

そこに彼女は、紅茶らしいお茶を注いでくれている

「それで、用件を聞きましょう」

彼女は、僕を見て、紅茶をすすりながらそう言った

しかし、飲み慣れないのか少しむせる

そして顔をしかめた

本当に紅茶なのだろうか

というか水は大丈夫か

いや、水は出るのだろうか

僕は、紅茶から目を離し、今回のあらすじを、彼女に話すことにした

それに対して

彼女は、数回頷いた後

ソファーの横に置いていた茶色い封筒を取り出す

其れをテーブル越しに、僕に渡す

成功報酬二十万

情報料十万というところです

過去の僕が、彼女の報酬を聞いて驚いたことがあったが

そのときの二分の一だとすれば

多少なりとも、気を使ってくれたという事だろうか

僕の仕事の中では、今回の仕事は大きすぎるし

最大でも五十万

一日一万換算で仕事をすることを考えれば

仕事の日数以上に、危険料という場所に金が入ることになる

それに、もしけがをすれば其れが上乗せされるし

そうなると、終わらないといくらになるかは、分からないが

五十万と言うところだろうかと

頭の中で計算する

「ええ、それで、お願いします」

僕は、失礼だが、ここで開けさせてもらう旨を言い

封筒を開く

軽く糊づけされた其れを破くように開き

中から、コピー用紙を取り出す

かなりの厚さであり

クリップが、上から三つ顔を覗かせている

「まず、一番上のが、似たような事件が起きた場所の情報

そして二つ目が、それに類似した事件の情報

そして三つ目が

その事件をふまえた上でのこの事件の解決案という風になってます

ちなみに、私は、超能力者ですが、透視ができるわけでも、物を燃やしたり動かすことができません

それこそ、個性のようで、一括りにはできませんでしょうに

それで、私の場合は、その場所で過去に何があったかが

分かります」

衝撃の事実だ

詳しいことは最後まで聞かなかったが

そう言うことだったのか

まだ信じきれないが

「私の場合、その場所に行かないと

その場所で何があったかなんて分からないし

幽霊が見えるわけでもないので

途切れ途切れの断片を見るくらいしかできません

其れでよければ、現場に向かいますがどうですか」

僕はそこで何を聞こうか迷ったが

「それは、依頼料に含まれますか」と聞いてしまったが

彼女は、夕飯をおごっていただければと言葉を閉じた

 

「どうして、現場に来ていただけることになったんですか」

行く前に資料に目を通したが

とても信じられる内容ではなかった

其れは、この世の物とは思えぬ事象であり

到底彼女のような、細身の人間を行かせるのは気が引ける内容だった

しかし、彼女は、車の中で

「いえ、久しぶりの仕事なので

外に出たかったので

それに買い物にいくお金もバカになりません」

さすがに、その金は含まれないだろうなと思うが

まあ、最悪いかし方ない

 

ここ最近この県内で、幾件も傷害事件が多発していた

其れは、体の一部が

綺麗に切り取られたように何者かに

持ち去られるという物で

通常、無差別な通り魔や

バラバラにして生死を奪う事件はあるが

この場合、被害者は皆生きていた

例外として内蔵の重要部位を取られたもの

下半身がなくなったものは、死体としてなくなっていたが

皆共通している点は、出血が驚くほどに少ないという点だ

そして彼女曰く

この手口は、他の地方に、良く伝承が残っている物に

酷似しており

また今に始まったことでもないと言う

たとえば、雪国ではカマイタチという妖怪が居るという

その妖怪は、さんびきひとセットであり

それぞれ役割があり

その終幕としては、傷ができたのに

血が出ないと言うものだ

しかし、彼女は、それらとは明らかに違う箇所があり

これは、

明らかな人為的なものだと

資料には、説明付けられていた

良く短時間でこれほどの物がと思ったが

彼女曰く、こういう仕事のために

資料は常に集め

対応できるようにしているという

何でも、過去のことは分かるが

未来のことはてんで見えないため

その場所に行き着く点として足がかりを何時も収集しなければいけないとか

ある意味で、情報屋だが

かなり偏っているのは確かだろう

 

彼女の両目が失われた場所に着くと

僕は、近くのスーパーに車を止め

先に現場にいる彼女の元へと戻る

彼女はと言うと、電信柱のちかくにたたずみ

じっとしていた

ふと、時計を見れば、三時過ぎ

途中、高速道路のサービスエリアにて

昼食をとり、ここに来たのだ

とは言え、彼女も、もう子供ではなさそうだが

そう遅くまで、仕事につきあってもらうわけにも行かないだろう

僕は、お金の受け渡しを、何時にしようかと考えながら

彼女の行動を見守る

以前は、彼女のそういうたぐいの行動は、別の仕事などがあり見たことはなかったが

何か、惚けた感じがするのは、気のせいではないだろう

こんな人通りは少ないが

女性が、いや、誰であろうと

突っ立ったままであれば

気にするのは当然のことだ

僕は、缶コーヒーでも買ってこようかと

思ったとき

彼女が突然倒れたのだ

さすがに、立ち続けていれば

貧血の一つくらいしてもおかしくないが

事が事だけに、別の要因なのかもしれない

すぐさま、近寄ると

彼女の額はぱっくり割れていた

まさか

僕は、彼女の目をのぞき込んだ

苦しさのためか

閉じた瞼が

瞬きをするときに開くが

さいわい、彼女の目の眼球は

その穴に収まったままだ

となると、血液は転んだときなのだろうか

僕は、ティッシュを、ポケットから出すと

彼女に渡す

さすがに女性の顔を、むやみにさわるわけにもいかない

彼女は、意識朦朧とした感じだが

それでも、地面に、手を突いて起きあがろうとする

血が、額からあふれる

病院に、行った方が良さそうだ

支えると

彼女のコートから何かが落ちる

其れは、長方形の白いかみであり

なにやら、幾何学な模様と古い文字が、ありのように書かれている

所々やぶけ、彼女の額の物か

赤い色が染み着いてる

これは、まずいことになったのだろうか

僕は、これからのことを、お札を拾いながら

辺りを確かめる

回りには、相も変わらず人がいない

彼女の口が開く

「帰りましょう」と

僕たちは、来たときと同じように

カーナビを使い彼女の家まで向かう

正直、事務所だけ使用している建物と言うよりか

あれは、自宅を自分のように兼用しているようだ

彼女とは、道すがら一切会話がなかった

 

 

後日

病院に連れて行った帰りに

そのまま事務所に行き

彼女と依頼者の娘を連れて

事件現場へ車で来ている

どうやら、事件という物が、解決したらしい

彼女の私物らしい公民館にありそうな

生地の厚い遮断性のありそうな黒いカーテンみたいにでかい生地である

それは、車の荷台においてあったが

其れを先に取り出して

僕は、スーパーへとむかい

後ほど合流する

もしもの時は、警察なり救急車を、お願いしますと

言われていたので、携帯を、救急の番号にしたまま

握っていた

全員がそろうと

「それでは、ハジメさせていただきます」と彼女は

カーテンを手に持って言う

正直、来るときに持たせてもらったが

30キロはありそうな

分厚いものであり

彼女の細腕では心配である

超能力者は、娘さんに並んでいただくと

二人で、マントでもかぶったかのように

その布の中に入る

その子供がシーツにくるまるような幼稚な物を見ながら

時間をつぶしていたが

不意に、中から二人は出てきた

暑くはなかったのだろうかと思ったが

二人の額に汗のような物はなく

逆に、依頼者の両目からは

赤い血のような物が流れていた

母親が、娘に駆け寄ると彼女の目をのぞき込んだ

そこには、遠目からも見えたが

黒い瞳が、しっかりと見えた

「良かったのだよな」

僕は、何が起きたのか理解できていない現状に

首を傾げたいのを我慢して

三人をただ眺めている

 

その後、無事依頼報酬を得た僕たちは

軽い食事の後

スーパーで、約束通り買い物を済ませ

無事帰宅を果たす

「いや、本当に、助かりましたよ」

僕は、玄関口で、彼女に言った

「いえいえ、またご依頼用があれば」

はたして、これが本当に、事実であれば

彼女のような本当の霊能力者など

かなり金儲けしていそうだが

秋風が吹く外に出て

家を出て

明かりもない暗い家を見ると

どうもそうでもないように思われた