霧の木曜日

コケシの1人ゴトhttp://rinnnedou.cart.fc2.com/鉱物と変態的日常のゴミ箱と化す予定 https://gagagaruisu.thebase.in

セル画

私はあるとき、一店舗しか入っていない

ビルの中にいた

薄暗い店内には

僅かに光蛍光灯が

床を照らしているが

それ以外は、あまりにも暗く

本当に、店をやっているのだろうかと

うたがってしまった

しかし、そのテナントが書かれた看板には、1店舗

「アニメ、セル画店 どうどう」

と、書かれていた

私は、たまたま携帯で、別のセル画店を探していたが

たまには、この見た事も聞いたことも無い、セル画店に、入店を決意して

廃ビルのようなその建物に、足を踏み入れた

床は、コンクリートが、むき出しであり

隅の方では、割れた床が、僅かな山を形成していたりもする

そんな中を、二階に上がり

全てシャッターが下りている

扉の中、一つだけ、シャッターが上がり

ライトが入っている店を見つけ、恐る恐る様子をうかがう

しかしながら、こんな立地にあるにもかかわらず

そのセル画店は、その他の店とさほど変わらず

店中に、段ボールがあり

そこに、フィルムに入れられたセル画や動画が、所狭しと置かれている

店番はおらず静かにアニソンが、流れていた

私は入店を決意して

店内に、入ると

けたたましい異音が鳴り響く

それはまるで、風を吹かすような轟音であり

目の錯覚か脳がやられたのか

段ボールの中のセル画が、揺らめいている気さえする

「はいはい、いらっしゃいませ」

店の奥から出て来た老人は、デニム生地のエプロンを身に着け

顔には、ヤギのようなひげが生え

その細いフチの眼鏡から見える目は

恐ろしくまん丸であった

「少々見せてもらっても」

老人は、軽く会釈すると

レジ前の机の下から椅子を引き出して着座する

私は、OKサインだと思い

一番まじかに合った

段ボールの箱から、フォルダーを、上にあげる

そこにはひどく赤い物が写っていた

一瞬それが、セル画だと思ったが

どうも違う

それはセルと言うよりは、写真のようであった

どう言う事なのだろうか、実物は、店の裏にでも置いているとか

しかし

目を凝らしてみるも

その細かさは、明らかに写真のそれであり

こんなものを、セルに使ったら

一分作れば、家が建ちそうである

「あのー」

私はこの店に入るに当たり

ここがどう言う物を、扱うのか

聞いておく必要性を感じ

老人に声をかけようとするが

驚く事に、背を丸めて

ゆっくりと動いている

「・・寝ている」

私はあきらめて、物色を再開することを選んだ